2000年代のビョーク

00年代のアルバムは、「Vespertine」(ヴェスパタイン)、「Medúlla」(メダラ)、「Volta」(ヴォルタ)の3枚です。それぞれの作品にしっかりした個性があり、MVや衣装も派手になっていきます。

2001年

ビョークのアルバム「Vespertine」(ヴェスパタイン)
(ヴェスパタイン)
第4作目のタイトルは、「夕方の」を意味するマニアックな形容詞です。朝や昼ではなく、夕暮れ時から家で聴くイメージだそうです。前作を動とすると、今作は静なアルバムになります。ジャケット写真は、白鳥のドレスを着て地面に寝転がっている写真の上に、白鳥のイラストが描いてあります。モノクロで美しいです。なんでこんなに白鳥推しかと言うと、ビョーク的に、このアルバムは白い冬の鳥を連想させたからだそうです。音楽的には、細かい音を組み込んだ曲に、コーラスの声が合わさって、透明感があって澄んだ印象が出てます。味で例えると、くどさが無く、淡麗なさっぱり味です。
ビョークの「Cocoon」のMV
Pagan Poetry (ペイガン・ポエトリー)
このアルバムで一番オススメの曲は、「Pagan Poetry」です。若干浮いて聴こえるぐらい、会心の一撃と言っていい出来になっています。終盤で無音になってアカペラで歌うくだりは、ドキリとさせられます。タイトルは「異教徒の詩」という意味で、複雑で難解な事の例えです。MVは、ボディピアス・ドレスのビョークが熱唱している映像で、セクシャルな雰囲気があります。監督は、イギリス人写真家のニック・ナイト(Nick Knight)で、彼は「Homogenic」と「Volta」のジャケット写真の撮影もやりました。
Aurora (オーロラ)
「Aurora」は、オルゴールの「Frosti」がイントロになっている曲です。雪の上を歩く音が聞こえ、オーロラの美しさや神々しさが感じられます。このアルバムは美しい曲が多く、前半の「It's Not Up to You」や、ラストを締めくくる「Unison」も良いです。「Aurora」後は、詩を歌詞に取り入れた曲も入って閑静なムードですが、リズミカルさがある「Heirloom」が良いアクセントになってます。
Cocoon (コクーン)
ささやくような歌い方が特徴の「Cocoon」は、MVがパンチ効いてます。全裸&真っ白なビョークの乳首から赤いヒモが伸びていくという、かなりシュールな映像です。髪型はうっすら和風テイストです。最後は赤いヒモに包まれて、繭になります。衣装デザインで有名な石岡瑛子が監督していて、白と赤という色の組み合わせがシンプルです。
ビョークの「Pagan Poetry」のMV
1Hidden PlaceSMV
2CocoonSMV
3It's Not Up to You--
4Undo--
5Pagan PoetrySMV
6Frosti--
7Aurora--
8An Echo, A Stain--
9Sun in My Mouth--
10Heirloom--
11Harm of Will--
12Unison--

2004年

ビョークのアルバム「Medúlla」(メダラ)
(メダラ)
1・2作目がポップ寄り、3・4作目がアート寄りと来て、第5作目はかなり実験的なアルバムになりました。歌だけじゃなくて、曲も人間の声でやろうという試みです。ヒューマンビートボックスや聖歌隊など、色々な声で構成された野心的な作品になります(例外的な楽器使用曲はNo.8&11)。声を駆使した複雑な曲が多いので、ヘッドホンで聴くと、より凄さが伝わります。タイトルは、ラテン語で「髄」という意味です。人間の声=太古の原始の音楽=根源的な真髄(essence)というイメージだそうです。ジャケット写真は、髪の毛を編んだようなマスクと、タイトル文字の首飾りです。ビョーク史上、最もクールな写真だと思います。
ビョークの「Who Is It」のMV
Who Is It (フー・イズ・イット)
このアルバムで一番オススメの曲は、「Who Is It」です。癖が強めの曲が多い中、この曲はメロディが分かりやすいので一番聴きやすいです。MVは、声ではなくてベルによる演奏(シングルに収録)になっています。鈴だらけの衣装が面白いです。その他では、最後を飾る「Triumph of a Heart」も、一番ノリが良いので取っ付きやすいんじゃないでしょうか。人体や内臓の単語を連発するユニークな歌詞です。日本人ビートボクサーのドカカ(Dokaka)が参加し、MVにも出てます。
Oceania (オーシャニア)
「Oceania」は、2004年のアテネ・オリンピックのために作られ、開会式でビョークが歌いました。音楽的には、人間の声の動きが興味深いです。MVは、深海のような闇の中で、顔に細かいパーツがびっしり付いたビョークが強烈です。MVを担当した映像デザイナー3人組のリン・フォックス(Lynn Fox)は、「Desired Constellation」の他、過去にMVが作られなかった「Unravel」や「Pluto」などの映像も製作しました。
Mouth's Cradle (マウス・クレイドル)
「Mouth's Cradle」は、聖歌隊のコーラスが効果的に使われています。タイトルの意味は「口のゆりかご」です。コーラス曲で言うと、「Vökuró」も美しいのでオススメします。今作唯一のアイスランド語の曲で、内容は子守唄です。ちなみに、「Öll Birtan」、「Submarine」(後半部分)、「Ancestors」、「Miðvikudags」の歌詞は、意味の無い適当言葉(gibberish)です。
ビョークの「Oceania」のMV
1Pleasure Is All Mine--
2Show Me Forgiveness--
3Where Is the Line-MV
4Vökuró--
5Öll Birtan--
6Who Is ItSMV
7Submarine--
8Desired Constellation-MV
9Oceania-MV
10Sonnets / Unrealities XI--
11Ancestors--
12Mouth's Cradle--
13Miðvikudags--
14Triumph of a HeartSMV

2007年

ビョークのアルバム「Volta」(ヴォルタ)
(ヴォルタ)
第6作目は、金管楽器がメインで、低音部が効いたエネルギッシュなアルバムです。テンション高めで、ライブを意識して作られています。タイトルは、電池を発明したボルタが由来で、エネルギーを溜め込んだイメージでしょう。アフリカ風・中国風・中東風などのエスニックな曲があり、曲の合間には波や船みたいな音もあるので、海上で世界を旅する雰囲気です。ジャケット写真は、でかい足の果物ロボット(?)で、背景は真っ赤です。かなりシュールなデザインで、カラフルさが今作の特徴になっています。内ジャケットには、他の惑星の民族衣装みたいなトライバルな写真があり、こちらもかなりかっこいいのでオススメです。(「ギャラリー」のページ参照)
ビョークの「Earth Intruders」のMV
The Dull Flame of Desire (ザ・ダル・フレイム・オブ・デザイア)
このアルバムで一番オススメの曲は、「The Dull Flame of Desire」です。アンドレイ・タルコフスキー監督(Andrei Tarkovsky)の映画「ストーカー」(Stalker)で引用されたロシア語の詩を、英訳して歌詞にしています。アントニー・へガティ(Antony Hegarty)というイギリス人歌手(トランスジェンダーで、現在は改名してアノーニ)とのデュエット曲です。静謐な演奏から、徐々にボルテージが上がっていく展開が素晴らしいです。MVは、2人の顔を映した三幕構成(光の粒→白黒2階調→闇の中)になっています。ちなみに、アントニーとは、「My Juvenile」と、「Vulnicura」の「Atom Dance」でもコラボしています。
Wanderlust (ワンダーラスト)
「Wanderlust」は、「この港から旅立つ」という歌詞で始まるので、港の音がイントロになっています。ポップで強い勢いがある曲です。ビョーク曰く、このアルバムの心臓だそうです。MVは、クレイアニメみたいな質感で、MVでは珍しく、3D映像で作られています。内容はビョークの川下りですが、おぶった人形(?)と格闘したりで、一般ピーポーにはちょっと理解が追いつきません。
Declare Independence (デクレア・インディペンデンス)
「Declare Independence」は、ビョーク史上、最もアグレッシブな曲です。MVが面白いので紹介します。大掛かりな特殊装置をわざわざ作っていて、かなりシュールです。曲の盛り上がりと共に色々と変化していく所が良いです。ちなみに、中国でのライブ中に、独立を煽動するこの曲の中でチベットを連呼したせいで、中国を出禁になりました。別のライブでは、この曲とコソボを絡めた結果、セルビアでのライブがキャンセルになりました。
ビョークの「Declare Independence」のMV
1Earth IntrudersSMV
2WanderlustSMVMV(3D)
3The Dull Flame of DesireSMV
4InnocenceSMV
5I See Who You Are--
6Vertebræ by Vertebræ--
7Pneumonia--
8Hope--
9Declare IndependenceSMV
10My Juvenile--
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