1937年11月30日、イングランド・サウスシールズ生まれのイギリス人映画監督。 ウェストハートルプール美術大学、ロンドン王立美術大学でグラフィックデザインなどを学んだ後、BBCに入社。BBC退社後、CM制作会社RSAを設立してCM監督として活躍。CM作品ではアップルの「1984」が有名。1977年に「デュエリスト」で長編映画デビューしてカンヌ映画祭で高い評価を受け、2作目のハリウッド進出作となる「エイリアン」が大ヒット。3作目の「ブレードランナー」がカルト的名声を得ました。「テルマ&ルイーズ」、「グラディエーター」、「ブラックホーク・ダウン」でアカデミー賞監督賞に三度ノミネートされ、「グラディエーター」で作品賞受賞、「オデッセイ」も作品賞にノミネートされています。その他、「キングダム・オブ・ヘブン」や「アメリカン・ギャングスター」など、話題作を撮り続けています。様々なジャンルの映画に挑戦し、リアリティのある映像美を追求する巨匠です。撮影・音楽・衣装など芸術面や、美術・セットの細部にこだわってます。2003年には映画産業への貢献が評価されて、エリザベス女王からナイトの爵位を授与されました。「レイズド・バイ・ウルブス」など、TVシリーズも多く製作しています。弟のトニー・スコットも映画監督で、「トップガン」や「スパイゲーム」、「マイボディガード」などを撮っています。 |
リドリー・スコット作品一覧 1977 デュエリスト 決闘者 (The Duellists) 1979 エイリアン (Alien) 1982 ブレードランナー (Blade Runner) 1985 レジェンド 光と闇の伝説 (Legend) 1987 誰かに見られてる (Someone to Watch Over Me) 1989 ブラックレイン (Black Rain) 1991 テルマ&ルイーズ (Thelma & Louise) 1992 1492コロンブス (1492: Conquest of Paradise) 1996 白い嵐 (White Squall) 1997 G.I.ジェーン (G.I.Jane) 2000 グラディエーター (Gladiator) 2001 ハンニバル (Hannibal) 2001 ブラックホーク・ダウン (Black Hawk Down) 2003 マッチスティック・メン (Matchstick Men) 2005 キングダム・オブ・ヘブン (Kingdom of Heaven) 2006 プロヴァンスの贈りもの (A Good Year) 2007 アメリカン・ギャングスター (American Gangster) 2008 ワールド・オブ・ライズ (Body of Lies) 2010 ロビン・フッド (Robin Hood) 2012 プロメテウス (Prometheus) 2013 悪の法則 (The Counselor) 2014 エクソダス:神と王 (Exodus: Gods and Kings) 2015 オデッセイ (The Martian) 2017 エイリアン コヴェナント (Alien: Covenant) 2017 ゲティ家の身代金 (All the Money in the World) 2021 最後の決闘裁判 (The Last Duel) 2021 ハウス・オブ・グッチ (House of Gucci) 2023 ナポレオン (Napoleon) 2024 グラディエーターII 英雄を呼ぶ声 (Gladiator II) |
トニー・スコット作品一覧 1983 ハンガー (The Hunger) 1986 トップガン (Top Gun) 1987 ビバリーヒルズコップ2 (Beverly Hills Cop II) 1990 リベンジ (Revenge) 1990 デイズ・オブ・サンダー (Days of Thunder) 1991 ラスト・ボーイスカウト (The Last Boy Scout) 1993 トゥルーロマンス (True Romance) 1995 クリムゾンタイド (Crimson Tide) 1996 ザ・ファン (The Fan) 1998 エネミー・オブ・アメリカ (Enemy of the State) 2001 スパイゲーム (Spy Game) 2004 マイボディガード (Man on Fire) 2005 ドミノ (Domino) 2006 デジャヴ (Deja Vu) 2009 サブウェイ123 激突 (The Taking of Pelham 123) 2010 アンストッパブル (Unstoppable) |
フランスのナポレオン時代に2人の軍人が決闘する歴史ドラマ。映像面ではフランスの古典主義画家ジョルジュ・ラ・トゥールの絵画に影響を受けているそうです。デビュー作から絵画の様に凝った構図と映像美を見る事ができます。特にラストシーンの美しさは、リドリー作品の中でも一・二を争うぐらい素晴らしいんじゃないかと思います。内容も、"闘い"のテーマなど、後の監督作品の基礎を感じさせるものになってます。ちなみに、最初の監督作品にはもともと、ジョゼフ・コンラッドの小説「闇の奥」にしようと思ってたそうですが、すでにコッポラ監督がこの権利を取って「地獄の黙示録」を製作し始めていたので、他の短編小説「決闘」にしたそうです。DVDスペシャルコレクターズエディションでは大学時代に撮った短編映画「少年と自転車」が特典映像に入ってます。この短編映画はリドリーが監督・脚本・撮影・編集を行い、弟のトニーが主人公の少年役で父親・母親も脇役で出演していて、貴重な映像作品です。 【受賞】 カンヌ映画祭の審査員特別賞 【商品検索】 デュエリスト 決闘者 |
【出演】
キース・キャラダイン ハーヴェイ・カイテル |
エイリアンとの遭遇・死闘を描いたSFホラー。クリーチャーデザインにスイスの超現実主義画家のH.R.ギーガー、コスチュームデザインにフランスのメビウス、宇宙船のデザインにロン・コッブなど、アーティストやデザイナーを積極的に起用。光と影を駆使した映像と、緩急をつけて緊張感を出す演出によって一級のサスペンスホラーになってます。"異世界"を圧倒的なリアルさで描くリドリーのお家芸がいかんなく発揮されてます。無名女優が主人公で、監督はイギリスの新人、しかもジャンルがSFモンスターホラーというある意味三重苦にもかかわらず、世界中で大ヒットし、alienという単語に「異星人」という意味を定着させました。シリーズ化されてジェームズ・キャメロン監督の「エイリアン2」、デビッド・フィンチャー監督の「エイリアン3」、ジャン・ピエール・ジュネ監督の「エイリアン4」が製作されていますが、リドリーは関与していません。ちなみに、エイリアン・シリーズはいつも新人監督が抜擢され、その後その監督が人気のヒットメイカーになってることから、「新人監督の登竜門」といわれています。2003年にいくつかのシーンを挿入したディレクターズカット版が製作されました。 【ノミネート】 アカデミー賞の美術賞 【受賞】 アカデミー賞の特殊視覚効果賞 【商品検索】 エイリアン 【本】 ギーガーズ・エイリアン |
【出演】
シガニー・ウィーバー ジョン・ハート イアン・ホルム
【脚本】
ダン・オバノン |
レプリカントとそれを追うブレードランナーを描いたサイバーパンクSF。工業デザイナーのシド・ミードを未来都市のデザインに起用し、西洋と東洋が混在するディストピア的な未来を創りあげています。酸性雨が降り注ぎ、光とスモークが入り混じり、細部まで徹底的に描き込まれた、その凝ったビジュアルは驚きの一言。屋台のおっさんの「2つで十分ですよ」や強力わかもとの巨大広告など日本的な物が目を引きます。映像・セットだけではなく、役者達の演技や、人間とは何かを考えさせる哲学的な内容も素晴らしくて胸を打つものがあります。 ヴァンゲリスの音楽もまた素晴らしく、特にエンディング曲は最高です。この作品は様々な解読がなされ、SF映画の代表的作品になりました。リドリーは「エイリアン」と「ブレードランナー」という傑作SFでその後の映画やアニメに多大な影響を与えています。製作時のゴタゴタのおかげで、「劇場版」以外に、いくつかのシーンを追加した「完全版」や、監督がナレーションやハッピーエンドを削除してユニコーンの夢を追加した「最終版」が出ました。2007年には公開25周年ということで、「ファイナルカット版」が上映されました。オススメは「ファイナルカット版」です。「メイキング・オブ・ブレードランナー」という本で当時の製作の様子などを詳しく知る事ができます。原作者のフィリップ・K・ディックは映画公開前に亡くなりましたが、ブレラン以降、彼の小説はいろいろな監督に映画化されて人気になっています。 【ノミネート】 アカデミー賞の特殊視覚効果賞、美術賞 【商品検索】 ブレードランナー 【本】 アンドロイドは電気羊の夢を見るか? 、メイキング・オブ・ブレードランナー |
【出演】
ハリソン・フォード ルトガー・ハウアー ダリル・ハンナ ショーン・ヤング |
幻想的なファンタジー映画。後に「指輪物語」の挿絵を手がけるアラン・リーが美術スタッフに参加。エイリアン、ブレラン並に緻密で美しいセットが創られ、映像美が素晴らしいです。台詞が詩の様な独特な感じで、一味違ったファンタジー映画になってます。魔王のデザインは、イギリスのロマン派詩人ウィリアム・ブレイクの絵画を参考にしているそうです。この作品も製作時のゴタゴタのせいで、アメリカ公開版とヨーロッパ公開版の2つのバージョンができてしまいました。このトラブルで音楽を丸ごと差し替えられてしまった作曲家ジェリー・ゴールドスミス(「エイリアン」でも音楽を担当、2004年逝去)は、それ以来リドリーとは一緒に仕事をしていません。のちにディレクターズカット版が出されて、これが一番のオススメのバージョンになっています。トム・クルーズはこの作品の後に、リドリーの弟トニー・スコットの「トップガン」に主演して大ブレイク。 【ノミネート】 アカデミー賞のメイクアップ賞 【商品検索】 レジェンド 光と闇の伝説 |
【出演】
トム・クルーズ ティム・カリー ミア・サラ |
ニューヨークを舞台にしたラブサスペンス。「プラトーン」のトム・ベレンジャーがなんだか情けない刑事役。「レジェンド」までのSFやファンタジーなどの大作映画から一転して、現代を舞台にした映画に方向転換しました。オープニングの夜のマンハッタンの空撮が綺麗です。監督作品の中では最も地味な印象の作品ですが、建築やインテリアなどリドリー的な映像も所々あり、上流階級と下町の生活の対比も興味深いです。監督曰く、「それまでの映画3本はとてつもない規模だったから、これは公園を好き勝手に散歩しているような気分だった。いままでよりも人間的なドラマだったよ。」だそうです。音楽ではクラシックやジャズがよく使われていて、オープニング・エンディングで使われている主題歌(タイトルにもなっているジャズの名曲「Someone to watch over me」)も良い感じに映画にはまってます。 【商品検索】 誰かに見られてる |
【出演】
トム・ベレンジャー ミミ・ロジャース ロレイン・ブラッコ |
日本を舞台にしたアクション映画。若山富三郎、安岡力也、ガッツ石松、島木譲二、内田裕也など日本人俳優が多数出演。松田優作が鬼気迫る存在感でヤクザの佐藤役を熱演しています。日本とアメリカの文化・価値観の対立がドラマの中心です。大阪の街が、リドリーの映像によって未来世界の様なブレランワールドに変身してます。映像以外にも、ドスを使ったバイオレンスシーンや、バイクを使ったスピード感のあるアクションシーンなど、見所が多いです。後にリドリー作品でおなじみになるハンス・ジマーも渋い音楽を作ってます。「エイリアン」の平凡パンチやウェイランド湯谷、「ブレラン」の屋台や看板、「ブラックレイン」の日本人・大阪、「ハンニバル」の日本人観光客など、よく見るとリドリー作品には日本的な物がいろいろ見つかります。松田優作は映画公開直後にガンで急死し、この作品が遺作となりました。 【ノミネート】 アカデミー賞の音響賞、音響効果賞 【商品検索】 ブラックレイン |
【出演】
マイケル・ダグラス アンディ・ガルシア 松田優作 高倉健 |
女性2人の逃避行を描いたロードムービー。監督作品で初めて全編ロケで撮影され、アメリカの自然風景の映像美が満喫できます。疾走する2人の乗ったサンダーバードと、色んなアメリカの音楽やハンス・ジマーの曲がとてもカッコイイです。リドリー作品では珍しくコメディタッチですが、シリアスな面も含んでいて色々と考えさせる女性映画だと思います。色んな事件・出来事を通して変化していく主人公2人の姿はとてもカッコ良く、特にラストシーンの演技と音楽は最高です。脇役の男優陣も素晴らしく、様々なキャラの男性をとても個性的に演じています。ロードムービー・バディムービー・女性映画の三つが見事に揃った作品です。リドリー作品では無名な俳優が抜擢されてそこからその俳優が有名になっていくという事が多いですが、この作品ではブラッド・ピットが脇役で出演し、注目されるきっかけになりました。 【ノミネート】 アカデミー賞の主演女優賞(2人)、監督賞、撮影賞、編集賞 【受賞】 脚本賞 【商品検索】 テルマ&ルイーズ |
【出演】
スーザン・サランドン ジーナ・デイビス ブラッド・ピット マイケル・マドセン |
探検家コロンブスの人生を描いた伝記映画。 コロンブス新大陸発見500周年記念で製作されました。「ブレードランナー」でも組んだヴァンゲリスが再び音楽を担当しています。スペインの建築物や海を航行するサンタマリア号、ジャングルの自然などの映像美が素晴らしいです。特に大陸発見のシーンは映像と音楽が見事に合っていて美しいです。単なるコロンブスの英雄話ではなく、コロンブスの野心・情熱・苦悩・挫折などを描いたシリアスな内容です。絞首刑シーンや、先住民との戦闘シーンなどの残酷描写も多いです。原題の意味は「1492年 楽園の征服」。リドリーは"闘い"というテーマに興味があるそうで、「デュエリスト」や「グラディエーター」では執念に燃える男の闘いを描き、「1492 コロンブス」・「ブラックホークダウン」・「キングダム・オブ・ヘブン」では、異文化の衝突が流血の凄惨な戦いに発展する様を描いています。 【商品検索】 1492 コロンブス |
【出演】
ジェラール・ドパルデュー マイケル・ウィンコット シガニー・ウィーバー チェッキー・カリョ |
60年代に実際に起きた海難事故をもとにした青春ドラマ。「1492 コロンブス」に続いて海と船が舞台。アルバトロス号の海洋学校での生活を通して成長していく少年達がドラマの中心で、それを美しい自然やリアルな海の映像が盛り上げます。60年代の雰囲気も何気ないようですが巧く出ています。"白い嵐"のシーンは極限状態の迫力がよく出ていて感動的なシーンです。監督曰く「彼ら(アルバトロス号の悲劇の関係者)は今まで、こと細かに自分達の体験を世間に語る機会が得られなかっただろう。だから、映画が事件をもっと尊重してもらうきっかけになればありがたい。」だそうです。リドリーは実話系の話に興味があるらしく、デビュー作に選んだ小説「決闘」も実話からできたものだそうで、「1492 コロンブス」では実在した人物コロンブスを描き、「白い嵐」、「ブラックホークダウン」では実話の事件を再現しています。 【商品検索】 白い嵐 |
【出演】
ジェフ・ブリッジス スコット・ウルフ ライアン・フィリップ |
女性兵士が過酷なSEALの訓練に挑む軍隊ドラマ。主演のデミ・ムーアが筋骨逞しい体と気合いの入ったスキンヘッドで孤軍奮闘しています。後に「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルン役で大活躍するヴィゴ・モーテンセンの鬼教官ぶりも良いです。豪腕の女政治家を演じるアン・バンクロフトも巧いです。軍隊の特殊な男社会が舞台で、その中で二重標準・政治の駆け引き・女権運動など様々な思惑が絡みます。映像では、様々な過酷な訓練が中心で、その生々しく苛烈な光景から苦痛までも伝わってきそうです。終盤の戦闘シーンの前後に揺れるカメラワークが特徴的。リプリー、プリス、テルマ、ルイーズ、ルッシラ、クラリスなど、リドリー作品に登場する女性は、行動力があって強い女性が多いですが、「G.I.ジェーン」のオニールはその中でもぶっちぎりの強さを発揮してます。 【商品検索】 G.I.ジェーン |
【出演】
デミ・ムーア ヴィゴ・モーテンセン アン・バンクロフト |
古代ローマ帝国時代の剣闘士の闘いを描いた史劇映画。フランスのロマン主義画家ジャン・レオン・ジェロームの「指し降ろされた親指」に触発されて製作を決意したそうです。原寸大セットやCGの映像を上手く駆使して、スケールの大きいローマの世界や巨大コロシアムを創りあげています。冒頭のゲルマニアでの戦闘やコロシアムの戦いなど戦闘シーンは迫力があり、ドラマ部分も役者達が好演しています。主役のラッセル・クロウのカリスマ性を感じさせる堂々とした演技が素晴らしく、皇帝役のホアキン・フェニックスの複雑な感情を持った演技も引けを取らず素晴らしいです。二人の男が執念で戦う様は、「デュエリスト」を彷彿とさせます。ハンス・ジマーの音楽とリサ・ジェラードの歌声も映画を盛り上げています。総興行収入では監督作品の中で一番稼ぎました。60年代以降パッタリと作られなくなった史劇映画というジャンルを復活させ、この作品のヒットをきっかけに史劇映画ブームが起こります。 【ノミネート】 アカデミー賞の監督賞、脚本賞、助演男優賞、編集賞、美術賞、撮影賞 【受賞】 アカデミー賞の作品賞、主演男優賞、視覚効果賞、衣装デザイン賞、音響賞 【商品検索】 グラディエーター |
【出演】
ラッセル・クロウ ホアキン・フェニックス ジャイモン・ハンスゥ オリバー・リード |
「羊たちの沈黙」の続編のサスペンスドラマ。リドリーが珍しく続編物に挑戦。前作から10年の歳月も経ってるし、あまりシリーズ物だと考えてないのかも。冒頭の銃撃戦からラストの晩餐シーンまで、残酷描写が多めです。イタリアのフィレンツェが舞台で、昼間は観光客でごったがえすブレラン的雰囲気だったり、夜は闇に覆われて不気味な雰囲気になったりと、映像が美しいです。原作で物議を醸したラストは、リドリーがあまり好きではなかったので脚本家・原作者と話し合って違う結末になってます。ちなみに、リドリーはグラディエーター撮影中に製作者のディノ・デ・ラウレンティスにこの映画の監督を依頼されて、カルタゴのハンニバル将軍の話かと勘違いして、断りそうになったそうです。「グラディエーター」「ハンニバル」「ブラックホークダウン」はリドリーらしいリアルな残酷描写満載で、アメリカではR指定になってしまいましたが、3本とも1億ドルを超えるヒットとなりました。 【商品検索】 ハンニバル |
【出演】
アンソニー・ホプキンス ジュリアン・ムーア ゲイリー・オールドマン ジャンカルロ・ジャンニーニ |
物語性を排除し、映画の80%を戦闘シーンが占める戦争映画。本物のヘリ・車輛・兵士も参加して、最悪の銃撃戦となった当時の極限状態の戦場をとことん再現しています。主人公が誰だったか分からなくなるぐらい多数の登場人物が入り乱れる群像劇で、一回見ただけじゃ人物の把握は不可能。リドリーの映像美が全編に渡って炸裂し、現場の兵士の視点の臨場感ある映像で、戦場の緊張感や恐怖を感じさせます。起こった出来事を時系列通りに淡々と重ねていくドキュメンタリータッチの作風は今までに無い異様な迫力を生みだしました。監督曰く、「観客に問いかける作品であって、答えを提供する作品ではない」だそうです。この事件についてさらに知りたい場合には、原作を読んだり「ブラックホークダウンの真実」を見る事をオススメ。DVDではコメンタリーや特典映像が充実したコレクターズボックスが出ています。 【ノミネート】 アカデミー賞の監督賞、撮影賞 【受賞】 アカデミー賞の編集賞、音響賞 【商品検索】 ブラックホーク・ダウン |
【出演】
ジョシュ・ハートネット エリック・バナ ユアン・マクレガー サム・シェパード |
潔癖性の詐欺師が主人公のドラマ。大作が続いたリドリーがちょっと方向転換して小規模でコメディの要素もあるドラマに挑戦。潔癖性の性格はリドリー自身の性格も反映されてるとか。ニコラス・ケイジ演じるかなり癖のある病的な主人公が、娘との出会いで次第に変わってくる所が良いです。親子のドラマと同時に、詐欺師の世界が描かれます。リドリー作品は暴力描写が含まれる事が多い(特にグラディエーター以降)ですが、この作品ではほとんどありません。映像ではプールの水の光を利用した照明や統一された色調などが良いです。役者の人はみんな良い演技を見せてますが、特にアリソン・ローマンは14歳の娘役を巧く演じています。サム・ロックウェルも飄々としてかっこいいです。DVDの特典映像にあるメイキングは、リドリーの映画の製作過程を詳しく見る事が出来るのでオススメです。 【商品検索】 マッチスティック・メン |
【出演】
ニコラス・ケイジ サム・ロックウェル アリソン・ローマン |
中世の十字軍とサラセン軍の戦いを描いた歴史戦争映画。聖地エルサレムをめぐってキリスト教とイスラム教が戦争する時代を通して、善・宗教・平和について考えさせる作品になってます。セットや衣装・装備が細部までこだわって描かれ、映像も絵画のように美しいです。様々な文化・人種・宗教が混在するエルサレムは、まさにリドリーが好む世界です。投石機ややぐらを使った攻城戦など、人間と人間がぶつかりあう凄惨な戦闘シーンも迫力があり、壁一枚を隔てて人間同士が争う空しさを俯瞰でとらえています。オーランド・ブルームは自分の信念・理想に従って行動する主人公をしっかり演じていて、周りを固める役者陣も巧いです。特に賢王ボードワン4世とイスラムの英雄サラディンは素晴らしいの一言。音楽では、ハンス・ジマーではなく、初担当になるハリー・グレッグソン・ウィリアムズが聖歌風・アラビア風の音楽など美しい曲を作っています。人物や地名・出来事はかなり史実に沿っていて、馴染みが薄い名称もあるので、キングダム・オブ・ヘブンの光も参考にしてみて下さい。実は劇場版は約50分カットされたバージョンで、本来のディテクターズカットは約3時間があり、より深い内容なのでこちらの方がオススメ。 【商品検索】 キングダム・オブ・ヘブン |
【出演】
オーランド・ブルーム リーアム・ニーソン エヴァ・グリーン エドワード・ノートン |
伯父の遺産のプロヴァンスのブドウ園を引き継いだイギリス人トレーダーのコミカルなドラマ。イギリス・ロンドンの寒色で硬質な映像で描かれるビジネス世界と、フランス・プロヴァンスの暖色で柔らかい映像で描かれる牧歌的世界の対比が面白いです。ブドウ園を売り飛ばそうと画策するイギリス人と、それを防ごうとするフランス人の攻防がメインで、そこにフランス人女性との出会いと恋、過去に過ごした伯父との記憶、所有権を主張するアメリカ人女性がからまってにぎやかな映画になってます。マッチスティックメンに続いて、リドリーには珍しいコメディ風味です。マリオン・コティヤール、アビー・コーニッシュなど、女性キャラが多いのも特徴的。ラッセル・クロウはグラディエーターに続いてリドリー作品では二度目の出演ですが、マキシマスとは全く違うキャラを演じています。伯父さんのアルバート・フィニーと子供時代のフレディ・ハイモアのやりとりも面白いです。フランス人映画監督ジャック・タチへのオマージュも込められています。 【商品検索】 プロヴァンスの贈りもの |
【出演】
ラッセル・クロウ マリオン・コティヤール フレディ・ハイモア アルバート・フィニー |
70年代のハーレムで麻薬によってのしあがった黒人ギャングを描いたギャング映画。ギャングのフランク・ルーカスと、刑事のリッチー・ロバーツを同時に描いていく構造になっています。リドリーは「デュエリスト」「ブレードランナー」「ブラックレイン」「グラディエーター」など、二人の男を主人公にして「追う者と追われる者」の闘いを描きつづけていますが、この映画もまさにその流れの作品です。対極の世界にいるフランクとリッチーの人生が対比されながら描かれ、それを通してアメリカの社会、時代、戦争、麻薬、腐敗などが浮かび上がってきます。 リドリー作品初出演になるデンゼル・ワシントンは、いわゆる強面ではなくて、スマートなビジネスマン的ギャングを好演していて、三度目の出演になるラッセル・クロウも、ユニークなキャラの刑事を好演しています。フランクの母を演じるルビー・ディーや、ニッキー・バーンズを演じるキューバ・グッディングJr.、悪徳刑事のジョシュ・ブローリン、イタリアン・マフィアのアーマンド・アサンテ(この人は1492コロンブスにも出演)など、脇役のメンツも多彩です。世界作りは、いつも通り細部まで作り込まれていますが、撮り方が独特で、いつものタッチとは変えてきています。前作から音楽を担当しているマルク・ストライテンフェルトの曲も映画にあっていて良いです。 【ノミネート】 アカデミー賞の助演女優賞、美術賞 【商品検索】 アメリカン・ギャングスター |
【出演】
デンゼル・ワシントン ラッセル・クロウ ジョシュ・ブローリン キューバ・グッディングJr. |
連続爆破テロを行うイスラム過激派テロリストを追うために中東で活動するCIA諜報員を描いたスパイ映画。スパイ映画というと007などのエンタメ的な物を想像しますが、この映画では諜報活動におけるダークで血なまぐさい現場をリアルに描いています。メインの舞台はヨルダンですが、ヨルダンに隣接するイラクやシリア、建設ラッシュが進むアラブ首長国連邦のドバイなど、中東を幅広くカバーしています。イラク戦争やパレスチナからの難民キャンプも取り上げられ、政治的・社会的な問題も扱った内容です。 ちなみに、劇中で言及される「グアンタナモ」とは、テロ容疑者や捕虜が虐待・拷問されているとして問題視された米軍基地の事です。無人偵察機プレデターからの監視映像などハイテクを駆使したアメリカのやり方が、それをかいくぐって無力化する敵の手法の前で脆さを露呈する感じは、ブラックホーク・ダウンにも通じるものでしょう。 リドリー作品初出演になるレオナルド・ディカプリオは、必死に現場で作戦を遂行しようとするフェリスを熱演しています。ラッセル・クロウは、ワシントンから手を汚さずに指示を出して現場を軽視するホフマンを演じていて、体重を20キロも増量して役作りをし、独善的で傲慢で醜く肥え太ったアメリカを体現していて面白いです。ヨルダン情報局(GID)のハニを演じるマーク・ストロングは、知的で落ち着いた物腰ながら油断できない人物を好演していて、存在感があります。イラン人女優のゴルシフテ・ファラハニ演じるアイーシャとフェリスの交流は、異文化というリドリーお馴染みのテーマに通じます。 【商品検索】 ワールド・オブ・ライズ |
【出演】
レオナルド・ディカプリオ ラッセル・クロウ マーク・ストロング ゴルシフテ・ファラハニ |
イギリスに昔から伝わる伝説の英雄ロビン・フッドを題材にした歴史映画。いわゆるロビン・フッド物語を大雑把に言うと「弓の名手で緑の服装。ノッティンガムのシャーウッドの森に住み、金持ちから盗んで貧しい人に配る義賊。仲間にはリトル・ジョンやウィル・スカーレット、タック修道士(Friar Tuck)。ヒロインはマリオン(Maid Marion)。悪役はノッティンガムの代官(Sheriff of Nottigham)。」で、過去に多数のドラマや映画にもなっていますが、今作では違う切り口で描かれ、ロビン・フッドの伝説が誕生するまでの物語をリアルに描いています。 また、これと同時に、獅子心王リチャードや弟のジョン王、妻のイザベラ、母のアリエノール、摂政のウィリアム・マーシャルなど実在の歴史の人物も登場し、マグナ・カルタ(イギリス大憲章。法の支配の元祖)が誕生するまでのイギリスの歴史も描かれています。ロビン・フッドとマグナ・カルタの誕生を同時に描いている所が今作の最大のポイントです。 リドリーらしくイギリスとフランスの「闘い」も主軸になっていて、長引く戦争を穴埋めするための重税、男が戦争に行ってしまい女や老人で切り盛りしないといけないコミュニティ、浮浪して盗賊になる孤児達など、戦争がもたらす暗い側面が描かれます。アクションシーンは迫力があり、細部まで作り込まれたリアルで美しい世界造りは今作でも衰え知らずです。リドリー作品は毎回キャスティングがユニークですが今作も様々な俳優が登場しています。闘う男のラッセル・クロウや、芯の強い女性のケイト・ブランシェット、魅力的な悪のマーク・ストロングなど、リドリーらしいキャラです。 【商品検索】 ロビン・フッド |
【出演】
ラッセル・クロウ ケイト・ブランシェット マーク・ストロング マックス・フォン・シドー |
「エイリアン」のプリクエル映画として企画され、その壮大な序章となる作品です。巨額を投資した最新のプロメテウス号と使い古された労働船のノストロモ号、男性が出産する「エイリアン」と女性が出産する「プロメテウス」、クリーチャー比較で言えば、男性器的な「エイリアン」と女性器的な「プロメテウス」など、両作品の違いを見ながら楽しむのもいいです。 タイトルにもなっている「プロメテウス」はギリシャ神話の神の名前で、人間を創りだしたと言われています。最高神ゼウスに反逆して人間に火(=テクノロジー)を与え、罰として永遠に鷲に肝臓を食われ続けるという話が、映画全体を暗喩的に表しています。映画冒頭では、「天」からやってきた「神」が生命を「創造」するという神話的なシーンをダークなSF的表現で描いていて素晴らしいです。 謎の遺跡(大気製造のための施設?兵器を蓄えた基地?)、謎の石像と無数の死体(暴走?自滅?)、謎の壁画(エイリアンの誕生を示唆?)、謎のカプセルと黒い液体(罠?殺戮兵器?)など、SFというジャンルを活用して映画にたっぷりと謎がつめこまれています。解釈や妄想を促していて、一筋縄では行かない作品です。映画のメインの内容としては、黒い液体との接触から始まるプロメテウス号乗員達の崩壊という感じです。二つの異なる存在の遭遇・衝突というのは、まさにリドリー・スコット的な内容です。異世界を徹底してリアルに描く映像表現もさすがで、リドリー初の3Dによって更に奥行きを増しています。サディスティックなグロ描写も健在です。 人間が創ったアンドロイドのデビッド、タイレル社長を彷彿とさせるウェイランド社長、デビッドと"姉弟"の様でありながら最後まで人間かそうでないかを曖昧にしたヴィッカーズなど、「ブレードランナー」のDNAを持っている所にも注目です。 【ノミネート】 アカデミー賞の視覚効果賞 【商品検索】 プロメテウス |
【出演】
ノオミ・ラパス マイケル・ファスベンダー シャーリーズ・セロン ガイ・ピアース |
麻薬密輸に手を染めた弁護士を描いた犯罪ドラマ。劇中では名前が明かされないCounselor(弁護士)、婚約者のローラ、金持ちのライナーと恋人のマルキナ、仲介人のウェストリーという5人の登場人物が中心です。アメリカとメキシコの国境が舞台で、弁護士が軽い気持ちで手を出した国境またぎの麻薬密輸計画が何者かにハイジャックされ、メキシコ麻薬戦争での凶悪さで知られるカルテル(麻薬組織)が動きだして陰惨な展開になっていきます。風景・光と闇・インテリア・衣装などリドリーらしい洗練された美しい映像の中で、これまたリドリーらしい流血・切断・殺戮が臆面もなく描かれていきます。ある意味本当のカーセックスシーンも強烈なインパクトを放ちます。台詞や含蓄たっぷりの会話シーンが中心で、前後関係をパズルの様に巧妙にずらして組み立てた前半部と、それが引き起こす結果を描いた後半部という構成です。初タッグとなる作曲家ダニエル・ペンバートンの音楽も良い感じです。 アドバイスが仕事のCounselorが周囲の人の警告やアドバイスをきちんと聞かず(ある意味周囲の人の方がCounselor)、「異世界」に足を踏み入れて転落していく様は皮肉です。リドリーは悪人や悪に満ちた世界など「悪」を好んで描いたきた監督であり、エイリアンやハンニバルなどの純粋悪を称揚してきましたが、この映画でも、なまじっかな愛や善など簡単に踏みにじられるような、良心の呵責など存在しない悪の世界が描かれています。邦題は、悪の法則じゃなくて悪の世界とか悪徳の栄え(サドの著作名からのパクリ)の方が合ってるかもしれません。 映画中ではチーターが印象的に使われていますが、単なる小道具じゃなくて象徴的な所が良いです。リドリーといえば「追うものと追われるもの」ですが、今回はそれと類似して「喰うものと喰われるもの」といった感じでしょう。 ちなみに、脚本のコーマック・マッカーシーはコーエン兄弟の「ノーカントリー」の原作者で、小説家として有名ですが、リドリーは以前に彼の最高傑作といわれる「ブラッドメリディアン」を映画化しようとしてグロすぎて頓挫した過去があります。 【商品検索】 悪の法則 |
【出演】
マイケル・ファスベンダー ハビエル・バルデム キャメロン・ディアス ペネロペ・クルス ブラッド・ピット
【脚本】
コーマック・マッカーシー |
旧約聖書の「出エジプト記」の預言者モーゼを描いた歴史映画。聖書が題材ということで、ビブリカルかつスペクタキュラーかつマッシブな映像になっていて、戦闘シーンや都市風景までリドリー的世界創りが遺憾なく発揮されています。古代エジプトを舞台に、モーゼとラムセスの対立が主軸になっていて、リドリーお約束の二人の男の確執ドラマです。ただし、直接的な決闘系ではなく、モーゼの神の力とラムセスの王の力がぶつかりあう展開です。エジプトで奴隷として酷使されるヘブライ人を救うためにモーゼが用いる戦法がテロリストを想起させたり、神の声を信じる姿が端から見ると狂人っぽかったり、放浪するヘブライ人(=ユダヤ人)もいずれ先住民にとって侵略者になると予想してみせたり、宗教を描くにあたってリドリーの視点もなかなか厳しいです。 また「神」(の使者)の描写もユニークで、良い神とも悪い神とも解釈できる感じです。「プロメテウス」でもリドリーは「神」を描きましたが、両者とも人間に甚大な被害を与える存在になっています。この映画では「出エジプト記」にある「燃える柴」「10の災い」「葦の海の奇跡」「十戒」の光景もかなりリアリスティックに描かれていて、特に10の災いは人によっては食べたポップコーン吐くレベルのキモ映像を見せつけます。こういうキモさを忘れない所が素晴らしいです。 リドリー映画では動物が登場する事が多いですが、今作でも色んな動物が登場して、リドリー動物映画としてもオススメできます(比例して動物が死ぬ描写も大変多いですが)。また、リドリーは都市フェチともいうべき監督ですが、過去作から今作まで、未来(ロサンゼルス)、現代(ニューヨーク、大阪、フィレンツェ、モガディシュ、ロンドン、ハーレム)、過去(古代ローマ、聖地エルサレム、古代エジプト)など、フィルモグラフィに錚々たる都市群が並んでいます。今作ではエジプト建築を建設するためにたくさんの人間が酷使されていますが、ある意味それを映画で実践しているのがリドリー本人と言っても過言ではありません。出演俳優では初出演になるクリスチャン・ベールやジョエル・エドガートンなど、脇役含めて個性的な役者が揃っていて、みんな良い顔を見せています。 【商品検索】 エクソダス:神と王 |
【出演】
クリスチャン・ベール ジョエル・エドガートン ベン・キングスレー シガニー・ウィーバー |
火星に取り残された宇宙飛行士を描いたSF映画。広大で美しい火星のランドスケープや、ユニークなデザインの宇宙船ヘルメス号、緻密な宇宙服、細部までリアルなインテリア、火星と地球を同時に描く技巧的な構成など、リドリーらしくミクロもマクロも隙のない世界作りになっています。 「異世界に入った人間」や「極限状態まで追いつめられる人間」はリドリーが好んで描くものですが、今作の主人公マーク・ワトニーは、孤独で絶望的な状況に追いやられてもあきらめず、次から次に起こるトラブル、一難去ってまた一難になっても、科学やアイディアで奮闘して、姿勢が非常にポジティブです。一人の人間のために、様々な人達が知識や知恵や労力を動員し、対立する大国どうしでも協調して取り組んでいく流れは、「闘い」や「戦争」を好んで描いてきたリドリーにとって新境地です。もしこれが冷戦時代に月に取り残された宇宙飛行士の話なら、ソ連が協力してくれるという流れになるでしょう。 「テルマ&ルイーズ」や「アメリカン・ギャングスター」など、リドリー作品では挿入歌の歌詞と映画の内容をリンクさせるという手法がよく使われますが、今作でも色々な懐メロが随所で効果的に使われ、歌詞もプラスになって映画を盛り上げています。ゴールデングローブ賞でミュージカル・コメディ部門の作品賞を受賞し、授賞式でリドリーは「…コメディ?」といぶかってました。 リドリー映画恒例の面白い顔ぶれキャスティングは今回も発揮され、独演会状態のマット・デイモンが素晴らしく、その他の脇役達もとても良い顔をしています。悪役ばっかりで映画途中で死ぬのが多い事で有名なショーン・ビーンの起用もユニークです(しかも指輪物語ネタに絡む)。 ちなみに、原題のMartian(マーシャン)は火星人という意味で、邦題のオデッセイはギリシャ神話のオデュッセウスの苦難の帰還の旅のことです。興行収入では、「グラディエーター」を超えて、リドリー史上No.1のヒットになりました。 【ノミネート】 アカデミー賞の作品賞、主演男優賞、脚色賞、美術賞、視覚効果賞、録音賞、音響編集賞 【商品検索】 オデッセイ |
【出演】
マット・デイモン ジェシカ・チャステイン ショーン・ビーン セバスチャン・スタン |
「プロメテウス」から10年後、植民可能な惑星を目指す移民船コヴェナント号(covenant=「神との契約」)を描いたSFホラー。前作に登場したエリザベス・ショウ、デイビッド、ウェイランド社長も登場します。宇宙船や充電のための帆のデザインもなかなか特徴的ですが、その乗組員が全員それぞれ夫婦(ゲイカップルもあり)という設定がユニークです。後の繁殖のためのつがいを大量に載せた「ノアの方舟」的な感じです。劇中では、愛でつながった夫婦達が、不運や不条理や悪によってどんどん破壊されていきます。 この映画の当初のタイトルは、エイリアン:パラダイス・ロスト(Paradise Lost)でした。この題は、ミルトンの「失楽園」で、その内容は、「神」と「神が創造した人間」(=アダムとイブという夫婦)に対して、地獄の「サタン」が反逆を企てるというものです。夫婦はサタンに騙されて知恵の実を食べてしまい、楽園から追放されます。この失楽園をベースにしながら、前作の「プロメテウス」に引き続き、創造主と被創造物の関係が描かれます。この映画における「サタン」にあたる人物はまさに純粋悪であり、「エイリアン」のエイリアン、「ハンニバル」のレクター、「悪の法則」のマルキナなど、リドリー的純粋悪の系列につらなります。 リドリーらしい異世界の構築、ダークで美しい映像、容赦ない残虐描写の他、「エイリアン」や「プロメテウス」をフィーチャーした音楽も良いです。配役では、悲しみを乗り越えて強さを発揮していくキャサリン・ウォーターストンや、ウォルターとデイビッドの二役をこなすマイケル・ファスベンダーが素晴らしいです。新旧アンドロイドという被創造物どうしの対話・対立シーンが完璧に映像化されています。被創造物が更に創造へ突き進んだ結果、おぞましいものが産み出されていく展開です。 映画中では、芸術や古典からの引用が各所であります。その中で重要なものを2つ紹介します。1つは、シェリーの詩「オジマンディアス」です。神をも恐れぬ尊大な王(=エジプトのラムセス。リドリーの「エクソダス」にも登場)とその後の廃墟を謳った詩です。シェリーの妻のメアリー・シェリーは人造人間を描いたSF古典「フランケンシュタイン」の作者で、副題は「現代のプロメテウス(Modern Prometheus)」になっています。もう1つは、ワーグナーの曲「ヴァルハラ城への神々の入城」(「ラインの黄金」というオペラのラスト)です。神々の没落を予言する内容で、映画に合っています。 最後に、個人的な解釈ですが、この映画こそ、リドリー版「闇の奥」という感じがします。コンラッドの小説「闇の奥」は、リドリーが映画デビュー作として計画していた作品で、内容は、ジャングルの奥地に行って音信不通になった男が、悪の王になっていたという話です。コッポラの「地獄の黙示録」ではカーツがそうなっていましたが、今作では、「サタン」がまさにその状態です。 【商品検索】 エイリアン コヴェナント |
【出演】
キャサリン・ウォーターストン マイケル・ファスベンダー ダニー・マックブライド ビリー・クラダップ |
70年代のイタリアで、世界一の富豪の孫が誘拐された実話の事件を描いたサンスペンス映画。当初は、ケビン・スペイシーが特殊メイクで石油王のゲティ役を演じていましたが、過去のセクハラ問題で降板になり、公開直前にクリストファー・プラマー代役で再撮影という大トラブルに見舞われました。ゲティの全シーン撮り直しを感じさせないクオリティで完成にこぎつけ、ゴールデングローブ賞(監督・主演女優・助演男優)やアカデミー賞(助演男優)にもノミネートされました。 ローマや豪邸を舞台にした「ダークな映像」「スモーキーな空間」「こだわりの美術・衣装」「残虐描写」など、リドリー的こだわり映像表現は今作でも光ってます。見た目だけではなく、内容もリドリー的でした。「エイリアン」「テルマ&ルイーズ」「G.I.ジェーン」「プロメテウス」など、もはや代名詞的とも言える「強い女」を、ミシェル・ウィリアムズが不屈の母として好演しています。「白い嵐」「ブラックホーク・ダウン」「アメリカン・ギャングスター」などと同じく「ノンフィクション系」であり、「ハンニバル」「マッチスティックメン」「悪の法則」などの金と人間が絡んだ「犯罪映画」なのもリドリー好みの題材です。息子が誘拐された事によって、普通の母が、富豪や犯罪組織がうごめく異常な金の世界にひきずりこまれる光景は、「異世界に入ってしまった者」の系譜にもなります。これは「ブラックレイン」「1492コロンブス」「G.I.ジェーン」「ブラックホーク・ダウン」「悪の法則」「オデッセイ」「コヴェナント」など枚挙にいとまがありません。この型は、異世界側から見ると、入ってきた者は「異邦人」(英語で言うと「エイリアン」)です。 また、「2人の主人公」もリドリー定番スタイルですが、今作では、不屈の母とエニグマティックな老富豪が、愛と金のせめぎあいで描かれます。老富豪はかなりパンチ効いた性格ですが、個人的には「グラディエーター」のコモドゥスを想起しました。どちらも金と権力を持っていますが、愛を求めているのにその歪んだ性格ゆえに愛を得る事ができません。大金で買った聖母子像と、現実の母と息子が抱き合う姿は、皮肉な対比になります。ちなみに、ローマの映像の中でコロシアムが映りますが、「グラディエーター」はまさにここが舞台の映画です。 【ノミネート】 アカデミー賞の助演男優賞 【商品検索】 ゲティ家の身代金 |
【出演】
ミシェル・ウィリアムズ クリストファー・プラマー マーク・ウォルバーグ チャーリー・プラマー |
リドリーの次回作は、中世フランスが舞台の決闘裁判を描いた作品だそうです。出演は、「オデッセイ」以来2度目のタッグになるマット・デイモンの他、アダム・ドライバー、ジョディ・カマー、ベン・アフレックが出演。 【商品検索】 最後の決闘裁判 |
【出演】
マット・デイモン アダム・ドライバー ジョディ・カマー ベン・アフレック |
有名ブランドのグッチ一族の確執を描いた映画。かなり前から製作しようとしてましたが、実現せずに流れていた企画です。主演は、レディー・ガガです。アダム・ドライバー、アル・パチーノ、ジャレッド・レト、ジェレミー・アイアンズなども出演。 【ノミネート】 アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞 【商品検索】 ハウス・オブ・グッチ |
【出演】
レディー・ガガ アダム・ドライバー アル・パチーノ ジャレッド・レト |
皇帝ナポレオンを映画いた映画です。「グラディエーター」のホアキン・フェニックスと再タッグになります。Kitbag(キットバッグ)というタイトルが予定されていましたが、変更になりました。ヴァネッサ・カービーも出演。 【ノミネート】 アカデミー賞の視覚効果賞、美術賞、衣装デザイン賞 【配信】 ナポレオン |
【出演】
ホアキン・フェニックス ヴァネッサ・カービー |
「グラディエーター」の続編です。前作に登場したルッシラ(コニー・ニールセン)の息子が主人公となります。 |
【出演】
ポール・メスカル ペドロ・パスカル デンゼル・ワシントン |
リドリー・スコットの次回作の予定は、音楽グループのビージーズの伝記映画です。「How Can You Mend A Broken Heart?」(ハウ・キャン・ユー・メンド・ア・ブロークン・ハート)というタイトルが噂されています。
今後の監督予定作品として、以下のようなタイトルが噂されています。
撮影中のリドリー・スコット監督。(クリックすると拡大画像が表示されます)
主なリドリー・スコット監督作品の画像。(クリックすると拡大画像が表示されます)
リドリー・スコット作品のジャケット集。
リドリー・スコットは特定のジャンルにこだわらずに様々な題材の作品を製作します。ジャンルや役者はバラバラですが、製作スタッフは結構安定しています。
リドリー・スコットはどの作品も面白い役者を集めていて、新人俳優・無名俳優でも大役に抜擢したりと、キャスティングのセンスが良いです。主役に同じ俳優を起用する事がほとんど無いのも特徴です(例外的存在がラッセル・クロウとマイケル・ファスベンダー)。下記のリストは起用順で、括弧内はその他の出演作品です。
【男優】 ハーヴェイ・カイテル (レザボア・ドッグス、パルプ・フィクション) ハリソン・フォード (スター・ウォーズ、インディ・ジョーンズ) トム・クルーズ (トップガン、ミッション・インポッシブル) トム・ベレンジャー (プラトーン、山猫は眠らない) マイケル・ダグラス (ウォール街、氷の微笑、ゲーム) 松田優作 (蘇がえる金狼、処刑遊戯、野獣死すべし) 高倉健 (幸福の黄色いハンカチ、鉄道員) ブラッド・ピット (セブン、ファイトクラブ、ワールド・ウォーZ) ジェラール・ドパルデュー (パルスーズ、刑事ベラミー) ジェフ・ブリッジス (トロン、ビッグリボウスキ) ヴィゴ・モーテンセン (ロード・オブ・ザ・リング) ラッセル・クロウ (ビューティフルマインド、レ・ミゼラブル) ホアキン・フェニックス (ザ・マスター、ジョーカー) アンソニー・ホプキンス (羊たちの沈黙、ニクソン) ゲイリー・オールドマン (レオン、裏切りのサーカス) ジョシュ・ハートネット (シンシティ、ブラックダリア) エリック・バナ (トロイ、ミュンヘン、ローン・サバイバー) ユアン・マクレガー (スターウォーズep1〜3) オーランド・ブルーム (ロード・オブ・ザ・リング) ニコラス・ケイジ (フェイスオフ、キックアス) エドワード・ノートン (アメリカンヒストリーX、25時) デンゼル・ワシントン (マルコムX、トレーニングデイ) レオナルド・ディカプリオ (タイタニック、インセプション) マイケル・ファスベンダー (それでも夜は明ける) ハビエル・バルデム (ノーカントリー、007スカイフォール) クリスチャン・ベール (アメリカンサイコ、ダークナイト) マット・デイモン (ボーン・アルティメイタム) アダム・ドライバー (スターウォーズ/フォースの覚醒) [その他] キース・キャラダイン、ジョン・ハート、イアン・ホルム、ルトガー・ハウアー、ティム・カリー、アンディ・ガルシア、マイケル・マドセン、チェッキー・カリョ、ライアン・フィリップ、ジャイモン・ハンスゥ、ジャンカルロ・ジャンニーニ、レイ・リオッタ、サム・シェパード、トム・ハーディ、サム・ロックウェル、リーアム・ニーソン、フレディー・ハイモア、ジョシュ・ブローリン、キューバ・グッディングJr、キウェテル・イジョフォー、イドリス・エルバ、マーク・ストロング、オスカー・アイザック、マックス・フォン・シドー、ガイ・ピアース、ベン・キングスレー、ジョエル・エドガートン、セバスチャン・スタン、クリストファー・プラマー、マーク・ウォルバーグ、ベン・アフレック、アル・パチーノ、ジャレッド・レト |
【女優】 シガニー・ウィーバー (ギャラクシー・クエスト、アバター) ダリル・ハンナ (キル・ビルvol.1〜2) スーザン・サランドン (デッドマン・ウォーキング、ラブリーボーン) ジーナ・デイビス (ザ・フライ、プリティ・リーグ) デミ・ムーア (ゴースト/ニューヨークの幻) ジュリアン・ムーア (めぐりあう時間たち、トゥモロー・ワールド) アリソン・ローマン (ビッグフィッシュ、スペル) エヴァ・グリーン (007カジノロワイヤル、ダーク・シャドウ) マリオン・コティヤール (エディット・ピアフ、インセプション) アビー・コーニッシュ (エンジェルウォーズ、セブンサイコパス) ゴルシフテ・ファラハニ (彼女が消えた浜辺) ケイト・ブランシェット (エリザベス、ベンジャミン・バトン) レア・セドゥー (アデル、007スペクター) ノオミ・ラパス (ミレニアム/ドラゴン・タトゥーの女) シャーリーズ・セロン (マッドマックス/怒りのデスロード) キャメロン・ディアス (チャーリーズ・エンジェル、シュレック) ペネロペ・クルス (ボルベール、それでも恋するバルセロナ) ジェシカ・チャステイン (ゼロ・ダーク・サーティ) キャサリン・ウォーターストン (ファンタスティック・ビースト) ミシェル・ウィリアムズ (マンチェスター・バイ・ザ・シー) ジョディ・カマー (フリー・ガイ) レディー・ガガ (アリー/スター誕生、ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ) [その他] ベロニカ・カートライト、ショーン・ヤング、ミア・サラ、ミミ・ロジャース、ロレイン・ブラッコ、キャロライン・グッドール、アン・バンクロフト、コニー・ニールセン、フランチェスカ・ネリ、ルビー・ディー、カーラ・グギーノ、ナタリー・ドーマー、クリステン・ウィグ、ケイト・マーラ |